0歳の皮膚を持つ40歳の女
めちゃくちゃ肌が綺麗な大人女子をイメージするようなタイトル。
確かにわたし0歳の皮膚を今、持っている。
悲しきかなそれは美しき顔の話ではなく、膝こぞうの話。
3週間ほど前のとある雨の日の朝。
近場の仕事にはいつも自転車で通勤している。
その日、雨が降っていることに気がつかず出る時になって初めて本日の天気を認識した。
歩いても行ける距離なので当初から雨を認知していたのならば、徒歩バージョンの時間に家を出たのだけど…時すでに遅し…
時間はギリギリ自転車バージョンまで迫っていた。
私は元々雨の日に自転車乗ることが出来ない人間なのだ。
巧みに特殊な形のレインコートを装着しカバンや足元まで覆いながらどんな悪天候にも関わらず移動手段として自転車を外さない強者を見かけると凄い! 雨ニモマケズ…どうか無事に行先に着きますようにと祈る気持ちになる。
それがまた前後にはお子さん付きならほんとに頑張れーと心で応援しかない。
普段はそんな私も今日は悠長なことは言ってられない。
自転車覆うタイプのレイコートを持ち合わせていないので、自転車傘差し片手技法を使うしかない。
出来る人には容易いこの技法。素人には中々難しい。
出がけに私より遅出の主人が見兼ねて、送ろうか??と声をかけてくれた。
本来ならありがすぎる神の声。
が…その日、朝からしょーも無さすぎるいさかいかあった。今となっては何かも思い出せない。
だからきっととてつもなくくだらないどーでもいいこと。
「負けだ!」
ここでお願いしたら、負けたことになる。
なんの勝負がさっぱりわからない戦いがその時自分の中で始まっていた。
全然大丈夫じゃないのに…
「平気やから」プイっと言い捨てる。
雨の中不慣れな技法を駆使しようとしたのが失敗だった。いや、そもそも意地はってひと勝負挑んでしまったのがそもそも間違いだった。
半分ぐらい行ったところで、なんだ私雨でも自転車乗れてるやん!一瞬の心の隙が生まれたその数秒後、登り坂の途中の雨にぬれた点字ブロックにタイヤがギュルンとスリップして大ごけした。
体もろともカバン、その中身、ポケットの中のiPhone、傘全てが吹っ飛んでいった。
挙句右ズボンの膝がかじられたように無惨に破け強打した膝からは流血。お気に入りのズボンはもう二度と履けないパンクなやつになってしまった。
あまりの悲惨ぶりに行きずりの方々が私を囲んでやれ自転車をおこしてくれたり、荷物を拾い集めてくれたり助けてくれた。遠くまで転がって雨に撃たれていたiPhoneまでご丁寧に拾い上げてくれた。
みんなに大丈夫ですか?と声をかけて頂き、雨の中皆さんの貴重な通勤時間に足を止めてもらっての介抱に感謝を伝えて、大丈夫です。ありがとうございましたと頭を下げてそそくさと自転車を走らせた。
もちろん傘技法は封印。
後半の道のりは雨に打たれながら痛さに増すのは恥ずかしさだった。
そして、その恥ずかしさに増すのが主人の好意を自分の意地で足蹴にしてしまった後悔だった。
バチがあたったと思った。
喧嘩して腹たってる相手に優しい言葉を私は掛けれないちっさい人間。
すでに最初から全て主人に完敗していた。
そんなことを反省しつつアクシデントに見舞われながらもギリギリで職場に到着。遅刻は免れた。
本当はこんな事があったのだーーと話したくなるけど、自分の器の小さが露見するのが気まずく、またそんな時間もなく、その日1日は流血の膝をノールックで勤めあげた。
職場では気をはっていたので、少しジンジンするかな?ぐらいの膝が帰宅してみると
結構ホラーの領域まで肉が出てる。
それでもコケたことを主人に話すことが高いプライドが邪魔して言えなかった。
適当に消毒して、キズパワーパッドでもはりゃ治るかと甘く考えいた。
がしかし…しだいに膝が悪臭を放つようになる。一向に治る気配を見せない。
弱気になって長女に膝臭くてやばいかもと相談。あまりの悪臭と傷の具合に長女がドン引きして今すぐ病院!
あかんそれは!と強いお叱りをうけ。怖くなり急いで病院に駆け込んだ。
先生からは初期の対応がかなり悪く傷が悪化してる。小石も奥に入ってる。これは素人に消毒も難しい状態やから通院するようにいわれ、それから1週間も膝の怪我ごときでそこまでする羽目になってしまった。
怪我して始めて気づくこと。膝って、実によく使う部位なのだ。
掃除中には膝つき雑巾がけがマストな私。それは怪我でも遂行する。外せない。だって床を綺麗に磨き上げることは運気アップなんだから。
この後に及んでも開運活動は止まない。なぜならこの1年は開運行動何からでもやってみるyearたがら。
習慣のヨガでも普段は感じても無かったけど膝を駆使する動きだらけ。
そんなこんなで全く膝を庇わない生活を送りつづけること1ヶ月。やっとかさぶたが定着し、いつの間にやらタイツの中で取れていた。取れるぐらいなら少し取りたかったとちょっぴり悔しい。
そして右膝に現れたのが、0歳の皮膚。
左膝は40年私の動作を支えてくれた痕跡が刻まれている。その差は歴然。年齢差40..
0歳の膝はとても繊細。
デリケートなお肌なので未だに右膝に体重かける動作をするとイタタタが出てしまう。
家族にまだ傷痛いん?長すぎやろ?とつっこまれるたび、だって、だって0歳やから。まだ赤ちゃんやからをもう何回も繰り返す。
せめて皮膚年齢差15歳ぐらいまで分厚くなってくれないかな。
風呂に浸かるたびピンクの膝を眺めながら思う。
つまらん意地と雨の日の片手自転車と行き過ぎた開運行動にはくれぐれもお気を付けましょう